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シートパイプ暗渠に関するQ&A

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シートパイプ暗渠に関するQ&A

※質問をクリックすると解説を表示します。

1.疎水材がないのに排水効果はあるのでしょうか。

 排水効果はあります。原理は弾丸暗渠と同じです。
 改良工夫により本暗渠としても十分に機能します。

[解説]
 シートパイプ暗渠は耕盤層および心土層に亀裂等のマクロポア*を発達促進させる効果が確認されています。シートパイプ暗渠はこの発達したマクロポアを利用して排水するものです。シートパイプ暗渠において,マクロポアは最低でも1~2%程度存在する(井上久義:亀裂が発達した粘土質圃場における水移動現象のモデル化,土壌の物理性 第59号,35-51,1989)ので,耕盤層および心土層の透水係数**はマクロポアが存在しない場合より1000~100,000倍大きくなります。したがって,耕盤層がザル状態(容易に水が抜ける状態)になり,シートパイプ暗渠における排水性は作土層の透水性に依存します。また,シートパイプ暗渠(設置間隔4 m)では集水管の配置間隔が従来暗渠(設置間隔8 m~10 m)の半分以下であること,マクロポアが集水管の直上に限定されないことから作土層を水が移動する距離が短いため従来暗渠よりむしろ排水性が良くなります。
*マクロポアとはミミズや植物の根あるいはクラックなどにより形成される土中の大きな間隙のことです。
**透水係数とは土中の水の流れやすさを示すものです。1日当たりに水が進む速さで以下に示します。一般的に水田の耕盤以下の透水係数は粘質土壌の場合, 0.1~1 cm/day,砂質土壌で1~10 cm/dayです。作土層の透水係数は土性に関係なくおよそ100 cm/day程度です。

2.埋設深40 cmの根拠を教えてください。

[解説]
 深さ40 ~70 cmの範囲で試行錯誤を繰り返し,40 cmの深さが最も効果的と判断され,以後,シーパイプ暗渠は埋設深40 cmを標準として施工されています。
 シートパイプ暗渠の開発当初の頃(昭和50年代)は埋設深40 cmとはシートパイプの管底までを指していましたが,平成以降はシートパイプ上端までの深さとしています。
 したがって,地下水位はシートパイプの底,すなわち地表面下45 cm以下に維持されます。(杉山満丸:シートパイプクロス暗渠工法と施工後の状態,農業土木学会誌第58巻,第2号,159-167,1990)。
 一般に地下水は排水路に向かって流れるので,地下水位に勾配が生じ,排水路から用水路側に向かって水位が高くなる傾向にあります。シートパイプ暗渠の場合,耕盤層に亀裂が発達し,かつ貫通しています。亀裂の中を水は自由に移動しますので,土壌中に多数のU字管(開水路)が形成された状態です。したがって,地下水位はどの地点でも,たとえ圃場の中心においても同じです。地下水が排水路とつながっていれば,排水路水位と同じになります。ただし,水の移動には時間を要しますので場所によって時間遅れによる水位のずれは生じます。
 地下水位は農業機械の走行に必要な地耐力と転換畑作物に湿害を与えないという2つの条件から検討し,決定すべきものです。
農林水産省土地改良事業計画設計基準「暗渠排水」〔地耐力と地下水位p37,p.114〕によれば,「農業機械の円滑な農作業のためにはコーン指数0.39 N/mm2 以上が必要である。また,この支持力を得るためにはこの支持力を得ようとする位置より最低15 cm以上地下水位を低下させなければならない。」とあります。

 耕盤でこの支持力を得るためには,作土層の厚さを15 cmとすれば,地下水位は田面下30 cm以上であればよいので,シートパイプ暗渠は地耐力の条件を満たしています。
 右の図は鳥取県農業試験場において平成2年に行った地耐力(貫入抵抗)調査結果です。15~25 cmの耕盤層の貫入抵抗が増加しているのがわかります。
 コーン指数と貫入抵抗は同じ意味で0.39 N/mm2 = 4 kg/cm2です。
 大分県日田市の事例を紹介します。平成3年,圃場整備後2ヶ月の圃場にシートパイプ暗渠を施工しようとしましたが,耕盤がなかったためブルドーザーが沈んでしまい大事になりました。乾いてから工事を開始し,5月に施工完了,3ヶ月後の8月には耕盤ができていたそうです。この事例は地下水位低下に伴う地耐力向上を裏付けるものです。

 また,前述の設計基準〔転換畑作物の地下水位管理基準p.168〕によれば,地下水位は50~60 cmに下げればほとんどの畑作物は栽培可能になりますが,作物ごとに適する地下水位は異なっています。
 転換畑でよく栽培される大豆は地下水位約30 cm以下,小麦は25 cm以下で正常に生育します。地下水位40 cm以下であれば,はくさい,レタス,ピーマン,ブロッコリー,なす,トマト,たまねぎ,キャベツなど多くの野菜の栽培が可能です。
 結果的に埋設深40 cmは地耐力の観点からも転換畑作物栽培の観点からも支障のない深さであるといえます。

3.埋設間隔4 mの根拠を教えてください。

[解説]
 間隔3~10 mの範囲で試行錯誤を繰り返し,4 m間隔が最も効果的,かつ経済的であると判断されたものです。この間隔に確定するまで8年を要しました。

4.施工実績はどのくらいあるのですか。

[解説]

 九州と山口で3,000 ha程度,全国で4,000 ha程度です。表1に,西日本圃場改良株式会社の施工実績の集計値を示します。

 

番号 採用県 地区(市) 地区数 採用年 採用面積(ha) 採用後の状況
1 福岡 糟屋郡 8 昭和58年~ 200 良好
2 長崎 対馬 1 昭和60年~ 75 良好
3 滋賀 米原市 8 平成3年~ 350 良好
4 大分 宇佐市ほか 35 平成13年~ 1485 良好
5 長崎 東彼杵郡 4 平成16年~ 50 良好
6 鹿児島 出水市 8 平成19年~ 70 良好
7 長崎 五島 2 平成20年~ 20 良好
8 宮崎 内山地区 5 平成27年~ 18 良好
9 長崎 宇良田井原地区 1 平成28年~ 1 良好

表1 シートパイプ暗渠の施工実績(西日本圃場改良株式会社)

5.40 cmより深く施工することはできますか。

埋設深50 cmでも施工事例があります。それより深く施工することも可能です。

[解説]

 正常生育および品質と生産性を確保することができる地下水位が50 cm以下である二条大麦や花卉類等の導入を計画している地区の場合,埋設深50 cmで施工します。モールドレーナの立て板は50 cm深さまで対応しており,それ以上の深さになれば立て板を製作して対応することは可能ですが,コスト高となること,また暗渠の効果が低下する可能性があります。

6.どのような土壌に有効ですか。

特に,粘質土壌に効果的です。

[解説]

 シートパイプ暗渠はφ100mm~φ150mmの弾丸孔(弾丸によって土壌を押し拡げて作られた生土管)の中にポリエチレンシートをパイプ状に成形して引き込む暗渠工法であり,疏水材は使用しません。Q1の回答にあるように,亀裂を利用して排水するものです。したがって,亀裂が発生し易い粘質土壌に効果的です。粘質土壌においては,亀裂の効果に加えて,生土管の径は経年変化によって施工時から次第に縮小するものの,円形を維持するため,良好な排水効果が長期的に持続します。砂質土壌では土管の壁が乾燥によって崩壊しシートパイプが埋もれてしまいます。しかし,それによって管が潰れることはありません。Q8をご参照ください。

7.施工ができない土壌はありますか。

[解説]

 施工できない土壌はありません。石礫が多い土壌は施工に手間がかかり,施工単価が高額になる可能性がありますので,採算性を考えて検討されると良いと思います。Q2の表2にあるように熊本県では礫の多い圃場での施工実績が数多くあります。Q9をご参照ください。

8.効果が出にくい土壌はありますか。
[解説]

 特にありません。砂質土壌では乾燥すると暗渠の壁が崩壊し,集水管(シートパイプ)が崩落した土に次第に埋まる状態になります。シートパイプと暗渠の間の隙間がなくなること,また砂質土壌では亀裂の発達が粘質土壌に比べて劣ることから粘質土壌ほどの排水効果は期待できませんが,砂質土壌は本来の透水性の良さと,植物根等によるマクロポアの効果が期待できます。

9.施工に適さない圃場はありますか。

 技術的にはほほとんどの条件下で施工は可能です。ただし,採算面から施工を断念することはあります。

[解説]
 平成13年度新技術等普及マニュアル(土地改良測量設計技術協会 編)によれば,「適合する土質は圃場面から深度0.7mまでの間の土壌中に,引き込み作業の障害となる笹,残根,埋木,礫,玉石等が混入していない土壌である。」と記載されていますが,このような場合でも条件によっては施工可能です。シートパイプ暗渠工法では引き込み作業中に障害物にぶつかり前進が阻まれた場合,立て板をモールドレーナから分離し,バックホーで障害物を除去した後,引き込みを続行できます。
礫混じり土壌の場合,直径20~30 cmの石が100 m当たり4~5個以下だとバックホーで除去しながら施工可能ですが,それ以上になるとコスト高となるので採算性を考えて検討する必要があります。
 また,地耐力(コーン指数)が2.55 N/mm2以上では強粘土盤で急激に作業能率が低下することから,コーン指数が2.55 N/mm2以上の場合,施工不適合とします。

10.圃場の長さはどのくらいまで施工可能ですか。

 シートパイプの施工は200 mまで可能です。
[解説]
 シートパイプは200 mの長さまでは施工可能です。長辺方向にシートパイプを施工する場合,圃場の長さは200 mまで可能です。長辺が200 m以上の圃場の場合,長さが200 m以内の短辺方向にシートパイプを施工することによって,長辺方向の長さは無制限となります。

11.大規模圃場でも効果はありますか。

 効果は標準区画圃場と変わりません。

12.1日に施工できるのはどのくらいの面積ですか。

 1日に30a区画圃場2枚(60a)が施工可能です。
[解説]
 シートパイプ敷設における1時間当りの作業量は300 m/hrです。圃場整備の標準区画である30a(30m×100m)圃場の場合,4 m間隔でシートパイプ7本施工しますので,700/300=2.33 hr掛かります。また,補助暗渠の基準作業時間は5.8時間/haですから,補助暗渠施工時間は5.8×0.75×30/100=1.31 hrです(係数0.75は配置間隔による補正係数)。シートパイプ敷設と補助暗渠敷設を合わせると2.33+1.31=3.64 (時間),およそ4時間掛かります。したがって,1日に30a区画圃場2枚(60a)が限度です。
 施工を急ぐあまり,礫や石を放置したり,開削部分の塩ビ管によるシートパイプの保護が不十分であることによってシートパイプが潰れ,効果が低減した例が農家からの指摘によって発見され,報告されています。また,シートパイプの敷設を急ぐと水平精度が悪くなり,通水・通気の障害となり,十分な効果が発揮できなくなります。

13.どのような作物に効果がありますか。

[解説]
 大豆,麦,チンゲンサイ,ブロッコリーなど多くの作物で増収などの効果が実証されています。また,シートパイプ暗渠工法は通気口を有し,土壌中に空気を供給・循環させる効果があるため作物関係の研究者から土壌中の好気性微生物が活性化することによって作物根に好影響を与えるというご指摘をいただいております。Q32を参照してください。

14.どのくらいの面積がまとまれば施工できますか。

[解説]
 一枚の圃場から施工可能です。ただし,補助金対象となるためには3ha以上まとまる必要があります。

15.利用できる補助金を教えてください。

[解説]
平成26年度現在,以下のような国の補助金があります。
農業基盤整備促進事業

  1. 定額助成単価 15万円/10a
    中心経営体に集約化(面積集約)する農地については,定額助成単価を2割加算
  2. 実施要件
    ・農業競争力の強化に向けた取組を行う地域
    ・総事業費200万円以上
    ・受益業者2者以上
  3. 実施主体
    都道府県,市町村,土地改良区,農業協同組合,農地中間管理機構 等
    他に,県営工事でも補助金はあります。Q42を参照してください。
16.施工単価はどのくらいになりますか。

[解説]
 1枚30アール規模の圃場で25万円/10a程度です。
 施工単価は圃場ごとに図面を引き,使用資材の数量を計上し,積み上げ計算により算定します。圃場が不整形の場合,継手等の使用量が増え,単価が高くなる可能性があります。また,礫が多くなると除去費用がかさみます。圃場が小さくなると圃場の面積に対する,シートパイプの引き込み回数が増えて割高となります。

17.地下灌漑はできますか。

[解説]
 シートパイプ暗渠のままでも地下灌漑は可能ですが,灌漑機能を追加して,SPIDI(スピーディ)システムとすれば給水,水位調整,間断灌漑などが自動で可能となります。スピーディシステムはシートパイプ暗渠を利用した地下灌漑施設の愛称です。

18.シートパイプを施工済みの圃場に地下灌漑施設を作ることはできますか。

 シートパイプ暗渠既設の圃場に後から灌漑機能を追加することが可能です。

19.農水省の設計基準には掲載されていますか。

[解説]
 昭和54年制定の農水省土地改良事業計画設計基準では暗渠排水は疎水材を使用するのが前提でシートパイプ暗渠工法は基準に適合しておりませんでした。平成12年に基準が改正され吸水管のみを埋設する暗渠工法も本暗渠として認定され,シートパイプ暗渠工法も本暗渠として設計基準で認められました。

20.今まで,普及しなかった理由を教えてください。

 疎水材を使用しない暗渠は本暗渠として,設計基準で認められていなかったからです。

[解説]
 農水省土地改良事業計画設計基準において,平成12年に改正されるまで疎水材を使用しない暗渠は本暗渠として認められていなかったため,国営または国の補助で実施される土地改良事業で採用されることがありませんでした。昭和50年代の施工は市町村,農協,試験場等に限定されていました。
 しかし,シートパイプ暗渠工法の実績により,一定の評価が得られたので農林水産省が平成2年(1990年)に創設した「ほ場整備関連新技術導入促進事業」の中で,浅層暗きょ工法(シートパイプ暗きょ工法)を新技術工法と定め,以後国営・県営等の事業での採用を認めたため,都道府県営事業を中心としてこの工法を採用するとともに,継続して排水機能・耐久性等の調査を実施してきました。
 浅層暗きょ工法が試験的に施工され,10年経過する間において,施工機械,吸水管材等にさらに改良・検討が加えられ,きびしい条件下においても施工でき,排水機能が保持できるよう適用地質(土壌)の拡大が図られてきました。
 さらに,平成12年に土地改良事業計画設計基準が改正され,吸水管のみを埋設する暗渠工法も本暗渠として認定され,シートパイプ暗渠工法の導入が可能となったため,平成12年以降,普及が伸び始めました。

21.維持管理の方法を教えてください。

管内の通気と亀裂の発達を促すように心がけることです。

[解説]

  1. 管内のフラッシング(洗浄):灌漑が終了したらすみやかに排水キャップを開け排水します。この作業で管内に堆積した泥はフラッシングされます。この作業以外にフラッシング作業は必要ありません。
  2. 亀裂を促進:管内の通気を促進します。通気口に蓋をする場合,必ず通気のための穴が空いていないといけません。また,排水後は作土層を荒起こししておくのがベストです。
  3. 補助暗渠:2年目以降の補助暗渠の施工は不要です。シートパイプ施工後に同じ深さに補助暗渠(弾丸暗渠)をシートパイプにクロスさせて施工することは不可能です。深さをずらして施工しても効果はあまり期待できません。昭和52年に福岡県立農業試験場において補助暗渠を初年度のみ施工した場合と毎年施工した場合の土壌の物理性,収量などの比較調査が行われています(本暗渠と簡易暗渠組合せによる総合排水促進に関する試験成績書,福岡県立農業試験場,昭和53年10月)。この報告書によれば,土壌の物理性,収量ともに差は生じておりません。亀裂を促進するためには荒起こしが有効です。
22.耐用年数を教えてください。

[解説]
 おおむね15年~20年と考えられます。15年以内に効かなくなった事例,それ以上経過しても効いている事例はあります。施工の良し悪しと管理の仕方で差が出てきます。
 シートパイプクロス暗渠工法と施工後の状態,農業土木学会誌58巻第2号,159-167(1990)に10年経過したシートパイプの調査結果があります。

23.暗渠のつまりの確認方法を教えてください。

 通気口から給水して排水口からの排水を確認します。

24.補助暗渠(弾丸暗渠)は再施工が必要ですか。

[解説]
 再施工は必要ありません。シートパイプ暗渠に補助暗渠のクロス施工は不可能です。深さをずらして施工しても効果はあまり期待できません。Q21を参照してください。

25.吸水渠の間隔を理論的に決定するデラクレの定常式において,透水係数は作土層,心土層どちらを使用するのですか。補正は必要ですか。

 シートパイプ暗渠では地下水面が上に凸の曲線にならないため,デラクレの定常式は適用できません。

[解説]
 新技術マニュアルにあるデラクレの定常式は理論上,心土層に適用する式ですが,シートパイプ暗渠には適用できません。なぜなら,シートパイプ暗渠では耕盤層に発達した亀裂により地下水面はほぼ水平に維持されるからです(Q2参照)。また,土地改良設計基準 技術書[27.現場透水係数の補正と吸水きょ間隔の計算]に掲載の暗きょ間隔Sの算定式 S=2H√(k/D×86.4) も適用できません。ここで,S:吸水きょの間隔(m),H:作土層の厚さ(cm),k:作土層の透水係数(cm/s),D:計画暗きょ排水量(mm/d)です。本式は水が作土層を吸水きょの方向に流れ,疎水材のある吸水きょに吸い込まれる前提です。シートパイプ暗渠では亀裂等の吸い込み口が吸水きょの直上だけでなく,離れた地点まで広く分布していると考えられます。

26.シートパイプと畦畔の距離は最低どれくらいですか。

 ブルドーザーの幅(約3.4 m)の制約により,畦畔から2 mです。

27.補助暗渠が潰れるのにシートパイプを引き込んだ弾丸孔が潰れないのは何故ですか。

 砂質土ではシートパイプが壁崩壊の障壁となり埋まりません。粘質土の場合は生土管の断面縮小をシートパイプが停止させます。

[解説]
 砂質土壌と粘質土壌で若干メカニズムが異なります。砂質土壌では乾燥により暗渠の壁に崩壊が生じます。シートパイプがなければそのまま穴が埋まってしまいます。しかし,シートパイプがあればそれが障壁となって埋まりません。粘質土壌の場合,暗渠の崩壊はほとんどなく,弾丸孔の直径が次第に縮小していって生土管とシートパイプの隙間が縮小していきます。しかし,シートパイプがあるので生土管の断面縮小はそこで停止します。円管は外からの圧力に強く,暗渠断面を縮小しようとする圧力に耐えられます。

28.降雨直後のぬかるみでの作業は可能ですか。

[解説]
 降雨直後でも施工可能ですが,圃場表面を荒らす怖れがあるので通常は圃場が乾くのを待って施工します。排水が悪く,常時ぬかるんでいる圃場については,表面水がある状態でも施工を行うことがあります。

29.トラクタでも施工可能ですか。

[解説]
 クローラ トラクタであれば施工可能ですが,専用のモールドレーナを製作する必要があります。サブソイラ(心土破砕機)で代用できる可能性もあります。
 モールドレーナとはシートパイプを引き込むために施工機械の後部に取り付ける機械のことをいいます。

30.干拓地での施工実績と効果を教えてください。

[解説]
 出水平野で施工しています。シートパイプは1ライン200 m,3 m間隔で施工し,補助暗渠はなしです。施工後は満潮時に田面まで水が上がってきますが,潮が引き始めると潮位に同期して排水されます。他にも掘削すると掘り上げた土が酸性に変わる島根県の中海干拓などで施工例があります。

31.シートパイプ暗渠は勾配がありませんが,水は流れるのですか。

[解説]
 水は暗渠の勾配に関係なく動水勾配で流れます。パイプが水平でも上流側の水頭(水位)が下流(排水口)側水頭(水位)より大きければ水は流れます(排水口のキャップを開けた時点で,管内の水平だった水位に変化が生じ,水が排水路に落ち始める状況を説明しています)。
 シートパイプ暗渠の場合,シートパイプ周囲の生土管(弾丸孔)の空間および亀裂を通して空気が侵入するので勢いよく流出し,下流側から上流に向かって次第に開水路状態になって流出します。

32.作物の収量はどのくらい増えますか。

 大豆を例にとると,条件によっては施工前の2倍以上の増収になりますが,どの報告でも安定して30kg/a前後の収量が得られるようになっています。

[解説]
 昭和63年~平成2年における鳥取県農業試験場の調査結果をつぎに示します。

大豆の収量(kg/a)

  S63 H1 H2 平均 比率
明渠 30.4 26.8 29.0 28.7 100%
シートパイプ暗渠 33.0 31.7 34.1 32.9 115%

 

野菜の収量

  アムスメロン
(g/個)
チンゲンサイ
(kg/a)
シロネギ
(kg/a)
ブロッコリー
(kg/a)
明渠 1,462 292.2 438.3 56.7
シートパイプ暗渠 1,546 370.1 533.5 84.9
収穫比 1.06 1.27 1.22 1.49

 他に,タマネギ,スイートコーン,小豆の調査も行いましたがこれらは明渠と大差ありませんでした。

 つぎに大分県三重農業改良普及所管内のシートパイプ暗渠施工前後の収量比較を示します。

 

転作作物の収量比較(S63年度,単位:kg/10a)

 施工場所   大豆 飼料作物
(トウモロコシ)
三重町 施工前 228 105
施工後 306 266
清川村 施工前 210 150 3,070
施工後 345 280 6,500

* 麦は三重町では小麦,清川村では大麦

 大分県宇佐市における平成14,15年の調査で麦の平均収量が2.4倍となり,大豆は1.5倍の収量増がありました。また,平成21年度の宇佐市,杵築市,日田市で同様の調査を行った結果,平均で麦の収量が1.8倍,大豆の収量が1.3倍になりました(大分県農林水産部現地情報,平成22年3月24日)。

33.作物の品質に影響は出ますか。

[解説]
 昭和63年~平成2年における鳥取県農業試験場の調査結果によれば,大豆において大粒比率が10%増,被害粒比率が明渠の40%以上に対して,10~20%に低下して品質向上がみられたという報告があります。
 大分県宇佐市における平成14,15年の麦の品質調査で1等比率が10%以下から50%以上に増加したという報告もあります。

34.ハウス栽培での効果を教えてください。

 排水ムラによって,生育差や根腐れ等の問題のあったハウスで,シートパイプ暗渠施工後,生育ムラがなくなったという報告があります。

[解説]
 トマトやイチゴを栽培しているハウスでは排水ムラによって,生育に差が出たり,根腐れ等の問題がありました。シートパイプ施工後,生育ムラがなくなりました。また,セロリを栽培しているハウスでは線虫防除や過剰塩類の除去のために行われるリーチング後の土壌水分の管理が容易になったとの評価を農家の方からいただきました。灌漑機能を追加してSPIDIシステムとすれば,効果は増します。

35.管口径の決定根拠を教えてください。

 技術やコスト面,作業の簡素化等の理由から,管口径を50 mmに決定しました。

[解説]
 当時,技術やコスト面,作業の簡素化等の理由から,管口径をまず50 mmに決定しました。つぎに,このパイプを使用して最も排水効果の出る埋設深と敷設間隔を試行錯誤で決定しました。それが現在の埋設深40 cmと敷設間隔4 mです。

36.排水口が1ヶ所/12a当りの設計根拠を教えてください。

 大分県では水稲栽培時に畔からの水漏れや決壊等を懸念し,最小限の掘削にするため,当時の担当者が排水口を経験的に1ヶ所/12aに変更したようです。

[解説]
 シートパイプ1本に対し排水口1ヶ所が理想です。大分県では水稲栽培時に畔からの水漏れや決壊等を懸念し,最小限の掘削にするため,当時の担当者が排水口を1ヶ所/12aに変更したようです。排水口が1ヶ所/12aでも排水性に問題はなく,低コスト化にもなっているようです。設計書に排水口が1ヶ所/12aという記述はありません(大分県北部振興局農村整備部に確認済)。

37.施工機械はブルドーザーですか。どのくらいの大きさですか。

 10t級の超湿地ブルドーザーで,全幅が約3.4 mあります。

38.農業機械の荷重でシートパイプが潰れることはありませんか。

 農業機械の荷重で潰れた報告は今までありません。

[解説]
 農業機械の荷重で潰れた報告は聞いたことがありません。しかし,勾配のきつい進入路付近では表土管理を十分にしておかないと,出入り時にパイプを破損する危険性があります。また,接地圧の大きい農業機械の頻繁な走行は控えた方が無難です。
 施工直後に十分な排水ができていない状況で,農業機械を入れてパイプを痛めてしまった事例が報告されています。排水が非常に悪かった圃場(常にぬかるんでいた土壌)では,表面水がなくなるまで,農業機械を入れない管理をおすすめします。一度,排水が完了してからは,代掻き期の農作業でも潰れたことはありません。

39.自分で施工することはできますか。

 十分な土木業経験者の方であれば,研修を受けることで可能です。

40.施工機械を借りることはできますか。

 ブルドーザーはレンタル可能です。

41.地元業者にどのようなメリットがありますか。

 地元業者の方がすべて施工される場合には,普及協会が熟練した指導員を派遣します。地元業者の方とシートパイプ普及協会会員が作業を分担することも可能です。

[解説]
 地元業者の方が受けられ,地元業者の方がすべて施工される場合には,熟練した指導員を派遣します。
 施工に使用するブルドーザーなどの施工機械はレンタルで貸し出すことができます。
 また,引き込み以外の作業を地元業者の方が担当し,シートパイプの引き込みをシートパイプ普及協会会員が担当することも可能です。
 シートパイプ普及協会会員企業が利益を独占することはございませんので,通常の暗渠排水工事と同様,安心してお引き受けください。

42.どのような手続きをすれば施工できますか。

 市町村役場または県の事務所(農林事務所・農林振興局)にお問い合わせ・ご相談ください。

[解説]
 市町村役場または県の事務所(農林事務所・農林振興局)にお問い合わせ・ご相談ください。シートパイプ暗渠工法は,浅層暗渠の中に含まれる工法で補助金の適用対象工法です。施工する際に使用可能な補助金の種類を知ることができます。そのうえで,市町村役場・県の事務所経由でご連絡ください。
 直接のご連絡・ご依頼・ご相談も承っております。

【お問い合わせ先】
・西日本圃場改良株式会社
福岡県久留米市北野町高良1443-7
Tel:0942-89-5041(担当 柳)
・日本シートパイプ普及協会
福岡市博多区御供所1-18
Tel:092-400-3503(担当 青崎)
FAX:092-400-3504

43.シートパイプや通気口が破損した場合の修理方法を教えてください。

 破損部分を確認して,必要な材料を大手ホームセンターで入手し,修復して下さい。シートパイプが破損している場合は塩ビ管等に置き換えて修復して下さい。

[解説]
 破損部分をまず確認して,必要な材料を準備して下さい(ほとんどの材料は,大手ホームセンターで入手可能です)。
 パイプ内に土砂が入らないよう注意し,埋設部分であればスコップ等で土砂を除去あるいは掘り出します。
 破損部分はパイプソー(のこぎり)で切除し,準備した材料を使い修復して下さい。
 通気口にキャップをかぶせる場合は必ず穴あきのものを使用してください。穴が空いてない場合は,必ず通気できるようドリル等で穴をあけてください。
 シートパイプが破損している場合,開削部分をφ50 mmの塩ビ管等に置き換えて修復して下さい。その際に掘削した部分から土中に伸びるシートパイプが入っている生土管内に最低20 cmは塩ビパイプとシートパイプが重複する部分を作ってください。

44.除塩については有効ですか。

[解説]
 除塩にはきわめて効果的です。作土層より上にある塩を溶かして排水すれば水は耕盤層の亀裂を通るので耕盤層以下に塩分は残留しません。したがって,蒸発によって下層に残留した塩分が上昇するということがありません。
 作土層より下に塩の集積がある場合はその層までを耕耘した後,除塩を行う必要があります。

45.排水以外に効果はありますか。

[解説]

 シートパイプ暗渠施工によって干ばつに強い圃場にもなります。シートパイプ暗渠では硬い耕盤層に亀裂が発達するため,作物の根はこの亀裂を通って容易に地下水に到達することができます。
 大分県大野郡千歳村で平成2年にシートパイプ暗渠施工した圃場の事例を紹介します。平成6年に全国的な大干ばつがありました。周囲のシートパイプ暗渠未施工の圃場においては稲が赤く焼けてほとんど収穫がなかったのに対して,この圃場では平年並みの収穫となりました。

お気軽にお問い合わせください TEL 0942-80-6051

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