[解説]
深さ40 ~70 cmの範囲で試行錯誤を繰り返し,40 cmの深さが最も効果的と判断され,以後,シーパイプ暗渠は埋設深40 cmを標準として施工されています。
シートパイプ暗渠の開発当初の頃(昭和50年代)は埋設深40 cmとはシートパイプの管底までを指していましたが,平成以降はシートパイプ上端までの深さとしています。
したがって,地下水位はシートパイプの底,すなわち地表面下45 cm以下に維持されます。(杉山満丸:シートパイプクロス暗渠工法と施工後の状態,農業土木学会誌第58巻,第2号,159-167,1990)。
一般に地下水は排水路に向かって流れるので,地下水位に勾配が生じ,排水路から用水路側に向かって水位が高くなる傾向にあります。シートパイプ暗渠の場合,耕盤層に亀裂が発達し,かつ貫通しています。亀裂の中を水は自由に移動しますので,土壌中に多数のU字管(開水路)が形成された状態です。したがって,地下水位はどの地点でも,たとえ圃場の中心においても同じです。地下水が排水路とつながっていれば,排水路水位と同じになります。ただし,水の移動には時間を要しますので場所によって時間遅れによる水位のずれは生じます。
地下水位は農業機械の走行に必要な地耐力と転換畑作物に湿害を与えないという2つの条件から検討し,決定すべきものです。
農林水産省土地改良事業計画設計基準「暗渠排水」〔地耐力と地下水位p37,p.114〕によれば,「農業機械の円滑な農作業のためにはコーン指数0.39 N/mm2 以上が必要である。また,この支持力を得るためにはこの支持力を得ようとする位置より最低15 cm以上地下水位を低下させなければならない。」とあります。
耕盤でこの支持力を得るためには,作土層の厚さを15 cmとすれば,地下水位は田面下30 cm以上であればよいので,シートパイプ暗渠は地耐力の条件を満たしています。
右の図は鳥取県農業試験場において平成2年に行った地耐力(貫入抵抗)調査結果です。15~25 cmの耕盤層の貫入抵抗が増加しているのがわかります。
コーン指数と貫入抵抗は同じ意味で0.39 N/mm2 = 4 kg/cm2です。
大分県日田市の事例を紹介します。平成3年,圃場整備後2ヶ月の圃場にシートパイプ暗渠を施工しようとしましたが,耕盤がなかったためブルドーザーが沈んでしまい大事になりました。乾いてから工事を開始し,5月に施工完了,3ヶ月後の8月には耕盤ができていたそうです。この事例は地下水位低下に伴う地耐力向上を裏付けるものです。
また,前述の設計基準〔転換畑作物の地下水位管理基準p.168〕によれば,地下水位は50~60 cmに下げればほとんどの畑作物は栽培可能になりますが,作物ごとに適する地下水位は異なっています。
転換畑でよく栽培される大豆は地下水位約30 cm以下,小麦は25 cm以下で正常に生育します。地下水位40 cm以下であれば,はくさい,レタス,ピーマン,ブロッコリー,なす,トマト,たまねぎ,キャベツなど多くの野菜の栽培が可能です。
結果的に埋設深40 cmは地耐力の観点からも転換畑作物栽培の観点からも支障のない深さであるといえます。
